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第四十四話『覗き見て』
* * *
自分の大切な友人があのような事故に遭ったと知り、形南は恐怖を感じていた。
そうして形南が気がつく前に素早く動き出した自分の執事に心の底から感謝していた。兜悟朗がいなければ、嶺歌の身は今頃恐ろしい事になっていたかもしれない。
(本当に、良かったですの……)
形南は泣きながら嶺歌に泣きつき、平尾に支えられていた。
しかし嶺歌に気を使わせてしまったようで、海辺の散歩を勧められる。
今は彼女の言う通りにしようと静かに嶺歌だけを見つめる兜悟朗を残してそのまま平尾と医務室を後にする。
嶺歌は最後、こちらに笑みを向けて手を振ってくれており、そんな嶺歌の芯の強さに胸の奥がじんわりと熱くなった。
後で嶺歌が歩けるようになったらたくさん彼女と楽しい事をしよう。そう思いながら形南も嶺歌に視線を向けて出ていた。
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