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予想外な回答に嶺歌は驚く。
しかし事前に調査をされていたという事に不思議と不快感は生まれなかった。これは相手が形南であるからなのかもしれない。
嶺歌は二人の回答に納得すると「それなら良かったです」と言葉を返した。
二人がここまで自分を信頼してくれているとは思っていなかったため、正直こそばゆい思いになり身体は強張っていた。
だがこんな状況も決して嫌ではなかった。
「ふふ、ご安心いただけたようで何よりですの。ですが今後の信頼の為に申し上げておきますわね。貴女様を今後、無断で勝手にお調べする事はしないとお約束致しますわ。他にも何かご要望があれば言って欲しいのですの」
形南はそう口に出すとこちらに顔を向け小さく首を傾けた。その仕草はお嬢様である彼女が行うとひどく可愛らしい。
しかし彼女の言葉に焦った嶺歌は「ないですよ! 怪しかったら勝手に調べても問題ありません!」と言葉を返す。
だが形南は「いえいえ。神様に誓ってそのような事は二度と致しませんわ」と上品な言葉遣いでそう宣言すると「それでは早速ですが、週末のご予定は空いていまして?」と遊びの約束を提案してきた。
「週末は空いてないんです」
週末は友人との予定が二件入っている。
嶺歌は申し訳ない思いで頭を下げると来週以降でお願いしたいと彼女に伝えた。しかし形南は顔を歪める事なく分かりましたと声を返してくれていた。
詳細はまたレインでやり取りをしようという話になったところでタイミング良く「和泉様到着いたしました」と言う兜悟朗の声が車内に響いた。
いつも思う事なのだが、彼はタイミングが絶妙すぎる。もしかしたらタイミングの良さを計算しているのかもしれない。並みの人間にできる芸当ではないだろう。
そんな事を思いながら「では形南様、また……」と言いかけたところで形南にこんな言葉を放たれた。
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