第四十六話『一喝』

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「平尾、ちょい来て」  一組の教室まで足を動かした嶺歌(れか)は、声を出したと同時に複数の一組の生徒から目線を向けられていた。  視線を浴びるのはいいのだが、このような不名誉な噂の的になるのは嶺歌も好きではない。  見てくる生徒らに呆れた顔で視線を返していると平尾はノロノロとこちらにやってきた。何だか疲れ切ったような顔をしている。 「め、目立つの勘弁なんだけど……」 「そりゃあたしもこれは嫌だって。とりあえず状況整理したいからこっち来て」  そう言って平尾を人の少ない裏庭まで連れ出した。平尾は終始顔を俯かせながら嶺歌についてきていた。  二人が歩いているところを目にした生徒達は先程と同様にこちらへ視線を向けてくる事が多かった。一体どこまで噂が広がっているのだろう。  嶺歌は好奇な目で見てくる生徒らに呆れ返りながらも足を進めていた。
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