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「形南、とお呼びになって?」
「え?」
「せっかくお友達になれたのですもの。堅苦しい呼び方は嫌でしてよ。私も貴女を嶺歌とお呼びしたいと思っていますの」
「それは勿論……! はい! 是非!」
「ふふ、敬語も今後は使わなくて宜しくてよ。貴女とは良いお友達になりたいのですの」
そこまで告げると形南は手を差し出して握手を求めてきた。
その彼女の優しげな微笑みに嶺歌は胸が熱くなる。しかしお嬢様である高貴な方と対等な友人関係を築いても、いいのだろうか。
(いや…………)
その考えは彼女に失礼だ。彼女は今、自分の目の前で友好の証である握手を求めてきてくれている。これ以上の証拠はない。
嶺歌はそのまま彼女の手を握り返すと満面の笑みを向けて言葉を返した。
「うん! あれな! 次の約束楽しみにしてるからね!」
「ええ! 嶺歌! 私も楽しみにお待ちしておりますの!」
そんな友情を交わして、嶺歌はリムジンを降りた。気分はいつも以上に心地よく、新鮮なこの状況に嬉しい気持ちが湧き起こりながら嶺歌は去っていくリムジンを暫くの間見送っていた――。
第四話『実行』終
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