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そう言って全員を睨みつける。
一組が急に静まったせいか、嶺歌一人の威圧的な声に反応した他クラスの生徒らが次第に一組に集まり始めていた。
「平尾が好きな子いるって言ってんでしょ? それを嘘とか空想とか馬鹿言ってんじゃねーよ、あんたら自分がそれされたら腹立たない? あたしだって他に好きな人いるんだから凄い迷惑なんだよ。とにかくマジで黙ってよね」
そう言葉を放ち、嶺歌が敵対する全員に向けて一喝すると彼らは何も言えないのか誰も声を上げなくなった。
しかし黙らせただけではこちらの気は済まない。きちんと清算させてもらおうと再び声を上げる。
「平尾を馬鹿にした奴ら全員今ここで謝ってよ。あたし誰が言ったかちゃんと覚えてるかんね」
そう言ってクラス中を見渡す。
しかしこれは流石に望んでいなかったのか平尾が慌てた声でこちらに言葉を向けてきた。
「い、和泉さんもういいよ……!? 今ので十分すぎるっていうか……」
「何言ってんの? さっきの威勢はどうしたよ? あんたは黙って謝罪を受け入れる準備でもしてな」
嶺歌はそう彼に言葉を放つとそのまま視線をクラス内に戻し「早く言えや」と平尾への謝罪を催促した。
平尾の逃げ出したくなる気持ちも分からなくはない。目立ちたくない彼が謝罪を受けずにそのまま噂だけをなくせればという考えのもと動いていたのは嶺歌も理解している。
だが、それではあまりにも平尾に失礼だ。
嶺歌はそう思う程に彼の先程の男前な強い姿勢に感銘を受けていた。
だからこそ、平尾が侮辱されたままでは終わりたくない。
これは正義を絶対視する嶺歌の我儘だ。しかしそれでも、嶺歌は変えたかった。世間からの平尾への評価を。
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