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「ご、ごめん……平尾」
「ごめんなさい平尾くん」
「平尾、悪かったよ」
嶺歌が終始威圧的に睨み続けていたおかげか否か、一組の生徒はポツリポツリと声を上げ、平尾に謝罪の言葉を向け始める。
平尾は動揺しながらも「う、うん……いいよ」と彼らの謝罪を受け入れ、その様子を見届けた嶺歌はもう何も言わずに廊下へ出て行った。これで一件落着だ。
「い、和泉さん」
「何?」
すると平尾に呼び止められる。彼は先程の逞しい姿勢が一気に無くなり、いつもの弱々しい平尾に戻っている。
嶺歌が振り向くと平尾はこちらをチラリと見てからこんな言葉を発してきた。
「め、めちゃくちゃかっこよかった……ありがとう」
「……」
それを聞いて嶺歌は意表をつかれた。それはこちらの台詞だ。
だが彼にそう言われるのは何だか嬉しいと思う自分もいた。平尾とは、戦友のようなものなのだ。だからこそ助けたいと思っていたのも本当だ。
「それあたしの台詞だから。さっきのあんた、かなりかっこよかったよ。もう予鈴鳴るから行くわ」
そう言って手をひらひらと舞わせながら自身の教室へと入っていく。
(今度あれなにこれ、見せてあげよう)
嶺歌は平尾が先程クラスメイト全員の前で自分が好きな人は形南なのだと、はっきりとそう口にしていた場面を思い浮かべていた。魔法少女の力を使えば彼のあのシーンは容易く映像にできる。
二人が付き合った際には絶対にこれを見せようとそう心に誓いながら、嶺歌は自分のクラスメイト達の質問攻めを交わして物思いに耽るのであった。
第四十六話『一喝』終
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