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そして放課後になると一目散に昇降口へ向かう。
途中途中で嶺歌に親しげに声を掛けてくる知り合いに言葉を返し、変にヤジを飛ばしてくる外野を無視しながら迅速に足を動かしていた。
「嶺歌さん、お疲れ様で御座います」
兜悟朗は校門から少し離れた先に車を停めてこちらに挨拶をしてくれた。
今朝形南に聞いた話だが、今日彼は半休を取得してくれたようで今回の兜悟朗は一度嶺歌も乗った事のある私用車を出してきていた。
衣服は時間の関係か執事服のままであったが、それが様になっている兜悟朗は今日もとんでもない格好良さを放っている。
嶺歌は兜悟朗の姿を視界にとらえ、自身の胸の鼓動が速くなるのを実感した。
彼と会わなかった日もそう長くないと言うのに、毎日のように会いたいと思っている自分がいる。
「兜悟朗さん、今日は誘って下さってありがとうございます」
そう言って小さくお辞儀をすると何やら外野が騒がしい。
そこで嶺歌は思い出す。今、自分は噂の的になっているのだと。
(そうだった)
「嶺歌さん、それでは参りましょうか」
すると途端に兜悟朗は嶺歌にそう告げて自身の車の置かれた方向を手の平で指してくる。
兜悟朗は何かを察してくれたようだ。
嶺歌は彼の配慮や洞察力に感謝と感心を示しながら小さく頷き、二人でそのまま車の方へと足を運ぶ。
車の中に乗り込むと、彼は柔らかな笑みを向けながらそれでは参りますねと告げて車を動かす。
嶺歌は終始、彼の表情に気持ちを高まらせながらしばしのドライブを楽しむ。今日はなんて素敵な日なのだろう。
そう思えるほどに兜悟朗との放課後のドライブは嶺歌の心を満たし尽くし、時間の経過もあっという間に過ぎていくのであった。
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