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嶺歌はまだ兜悟朗への想いを秘める前に、彼が恋心を学び損ねた話をしてくれた時の事を思い出した。
学生時代は数名の異性と交際をしていたものの、結局恋心が分からなかったのだと彼は話してくれていた。だからこそ形南の平尾をまっすぐに思う気持ちに感銘を受けているのだと、彼は本心からそう口にしていたのだ。
(あたしを……恋愛対象として見てはくれてるのかな)
嶺歌を一人の女として見てくれていなくとも、その対象になる可能性自体はあるのだろうか。
十一歳も離れている子どものような嶺歌を兜悟朗は恋人対象として認識することが出来るのだろうか。そう考えると、怖い思いがどうしても襲いかかってくる。
(やっぱ、振られたら嫌だから、告白はまだ…したくないな)
本当は今すぐにでも兜悟朗に思いを伝えたいという気持ちに変わりはない。
だが彼に拒否された時の事を考えると嶺歌は勇気を出せずにいる。
それはずっと兜悟朗が好きだと自覚してから持っている嶺歌にしては珍しい消極的な感情であった。
嶺歌はナーバスになった自分を律するように首を小さく振ると映画に集中する。
兜悟朗の気持ちは分からないが、今はせっかくのこの時間を存分に楽しみたい。他でもない、大好きな男の人と一緒に見られる映画なのだから。
そう思い直した嶺歌は思考を切り替え、初の4DXを楽しむのであった。
第四十七話『放課後のデート』終
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