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「嶺歌、最近兜悟朗とはどうですの? ずっとお聞きしたかったのですのよ!」
一度訪れた事のあるカフェに形南と二人で入り、取り留めのない雑談をしていると形南は急に話題を変えてきた。
今回は恋バナという名目で会っていたため兜悟朗にはリムジンで待機するように予め形南が指示を下していた。
そのため二人きりなのだが、女子会が始まって数分としない内に尋ねてくる形南に嶺歌は顔を赤らめながら言葉を発する。
「うん…ぶっちゃけ最近、結構距離が縮まった気はする」
嶺歌は本心から思っていた言葉を口に出す。
だが前から考えていた彼の本音が恋愛なのかどうかまでは未だに結論を導き出せずにいる。
その事も併せて彼女に報告すると、形南は口元に手を当てながら静かに話を聞いてくれていた。
「私も兜悟朗が恋として貴女を見ているのかまでは分かりませんの。ですが、私、確かに感じましてよ」
「ん? 感じたって何が?」
嶺歌は形南のその意味深な言葉に反応する。
すると形南はニコリと笑みを溢しながらこんな言葉を口にしてきた。
「兜悟朗の嶺歌への態度は、どう見ても『特別』でしたの! こちらは贔屓目なしの私のご意見ですのよ!!」
瞬間、嶺歌はボッと顔が熱くなった。
兜悟朗と何年もそばにいた他でもない形南がそう言うのだ。
嶺歌は自惚れではないのだと再認識しながらもそれが嬉しい気持ちと気恥ずかしい思いとで混ざり合い、言葉を失う。
そんな嶺歌の様子を正面から見ていた形南はうふふと声を漏らす。
「嶺歌ってば本当に可愛らしいわ。もう完全に恋をする乙女ですのね」
「……だってさ、兜悟朗さん、カッコいいんだもん」
嶺歌は形南の言葉に否定する事なくそう認める。
彼の全てが、嶺歌の心を奪っている。それはもはや否定しようもないほどに大きく膨らんでいる状態で、その事にも嬉しさを感じてしまうのだから彼への想いをはぐらかす事など出来なかった。
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