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嶺歌の話が一段落すると今度は形南と平尾の話になる。
形南は平尾に明日会う予定なのだと嬉しそうに報告をしてくれていた。
嶺歌はその話を今朝方平尾に聞いていた事を形南に説明する。すると形南はあら! と声を漏らしてこちらに視線を向けてきた。
「嶺歌、最近平尾様と親しくなられたのですね……嬉しいですの!」
しかし嬉しそうにそう口にしたと同時に形南は少しだけ、顔を俯かせてこう呟いた。
「けれど、何故でしょう……少しだけ、複雑な私もいますの。お二人の仲が良いのは喜ばしい事ですのに」
そう言葉にする形南を見て嶺歌は彼女の心境を察した。そして自分の配慮が足りなかった事を認識する。
「あれなごめん。平尾とは互いに恋愛対象じゃないって思ってるのは間違いないんだけど、不安にさせちゃったね」
そう言って形南に視線を返した。
自分が形南の立場だったら複雑な思いになるのも当然だと思ったのだ。
意中の相手が、同じ学校に在籍する友人と親しいというその状況は、たとえ恋愛が関与していなくても面白くないのかもしれない。
「あれなが望むなら平尾とは距離も置くし、遠慮なく言ってよ。これ以上不安にさせるのは本意じゃないよ」
平尾との新たな関係性に嶺歌自身満足しているのは確かだ。
だがそれでも形南の方が大事だ。優先したいのは形南の気持ちであり、平尾との友人関係ではない。
そんな事を迷いなく思っていた嶺歌がそうはっきり口に出すと、しかし形南は「いいえ!」と否定の声を出す。彼女も彼女で己の心と葛藤している様子だった。
「そのようなお気遣いは無用ですのよ嶺歌、ありがとう御座いますの。けれどね、こちらは私の問題ですの。平尾様と嶺歌が親しくなられる事はそもそも私が望んでいた事……このような気持ちになる私がまだまだ未熟だというお話ですのよ」
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