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「いや、そう思うのは普通じゃない?」
形南は自分に言い聞かせるようにそう口にするため、嶺歌も自身の思った事を彼女に告げる事にした。
「あれなは今あたしに嫉妬してて、でもそれは自分の心が狭いから、自分がまだ未熟な人間だからって思ってるんだよね? でもそれは、どんな人間でも感じるだろうし、制御するのは難しい話だよ」
「……っけれど……お友達の嶺歌にこのような感情……っ」
「ヤキモチなんてみんなあるよ、だからあれなのその感情は悪いものじゃないし、あたしもそう思われても全然不快じゃないから大丈夫。むしろあたしの配慮が足りなすぎたよ、ごめんね」
嶺歌は眉根を下げ悲しみに暮れる形南の方に移動すると、そのまま形南の頭をそっと撫でてそんな言葉を掛ける。
形南が感じている感情は間違いようもなく平尾を好きすぎるが故の嫉妬だ。
どれだけ大切な友達であろうと親友であろうと、好きな人が自分以外の誰かと親しい事を嘆くのは決しておかしな感情ではない。
嶺歌も形南と兜悟朗の二人をそこまでではないにしろ、羨ましいと感じた事は何度かあった。
正義を貫く嶺歌も、いつも兜悟朗のそばにいられる形南を羨んだ事は確かにあったのだ。
それを形南に伝えると形南は静かに泣いていた顔を上げて「そうでしたの?」とこちらを見る。嶺歌はうんと頷くとそのまま言葉を続けた。
「まあ二人の親愛関係は知ってたから、凄い嫉妬心とかはなかったけど、あれなの事を羨望した事はあったよ。だから皆あるんだよ、変な感情なんかじゃない」
そう言って再び形南の頭を撫でた。
形南は大人しく嶺歌に撫でられ続け、小さな嗚咽を見せながらも嶺歌のその言葉に何度も頷いていた。か細い声でお礼の言葉を口にして。
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