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形南といつも通りの雰囲気に戻り始めると、嶺歌はずっと気になっていたある事をこの機会に尋ねてみる事にした。
それは形南と兜悟朗の関係性についてだ。
形南と兜悟朗をそのような目で見た事は本当にないのだが、形南本人としては兜悟朗の事をそのような目で見た事が一度もないのか単純に気になったのだ。これは完全に嶺歌の好奇心である。
すると形南は注文したアップルティーを口に含めた後、口角を朗らかに緩めながら嶺歌の問い掛けに答え始める。
「そのような事は決してないと言い切れますの」
そう言ってもう一口アップルティーを口に入れた。
「兜悟朗は私の大切な執事であり家族ですの。恋愛感情を抱くにはあまりにも親愛が強すぎますのよ」
それはとても説得力のある一言だった。嶺歌はもう尋ねる事がないとそう思える程に形南の説明は納得感が強く、それ以上この手の質問をするのは野暮に感じられた。
そう思っていると、形南はティーカップをテーブルに置きながら「ですが」と尚言葉を続けた。
「そのようなお話はお聞きした事がありますのも事実ですのよ。私と兜悟朗では有り得ない事ですが、私のお知り合いにも執事と結ばれた事例は確かにありますの」
「え、そうなんだ!?」
まるで少女漫画の世界のような話だ。だがそれが実際にあるという話には嶺歌も瞬時に納得していた。
きっと嶺歌が形南の立場で、兜悟朗がそのまま執事であるならば自分は間違いなく彼を異性として好きになっていただろうとそう確信しているからだ。立場の問題は関係なく、嶺歌が兜悟朗を好きになったのは必然的だと言える。
嶺歌がそう形南に伝えると彼女は頬に手を当てながら目を輝かせていた。
「嶺歌ってば本当に兜悟朗を慕っておりますのね、嬉しいですの! 本当に、心から応援していますのよ」
そう言って可愛らしく笑顔を見せてくる。
嶺歌はその素直で純粋な友人の笑顔にありがとうと言葉を返しながら、兜悟朗への想いを改めて強く実感するのであった。
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