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第四十九話『確かめたい令嬢』
* * *
形南が学校を終えると兜悟朗がいつものように迎えに来ており、そのままリムジンに乗り込む。今日は平尾に会える日だ。
形南は緩みそうな頬を引き締めながら窓の外に目を向けた。
そうして一日前の出来事を思い出す。昨日、嶺歌と話が出来た事が本当に良かった。
前の日は口に出すつもりがなかったものの、感情が抑えきれずに自身の黒い感情を曝け出してしまっていた。だがそれでも嶺歌はそれを悪とは言わずに当たり前の感情だと、そうはっきりと明言してくれていた。
それが形南にとってとてつもなく救いに感じられ、形南は以前よりももっと嶺歌の事が大好きになっていた。
これまでも彼女の事は本当に尊敬しており、好きな友達であったが、昨日の一件からその気持ちは更に上へと向上していた。
嶺歌は形南が想像してきた以上に優しくて、強い心を持っていると今回の件で改めて認識する事が出来ていた。
「兜悟朗」
形南は自分の執事の名を呼ぶ。彼はいつものように迅速に「はい、お嬢様」とこちらの言葉に声を返す。形南はそのまま窓の外に目を向けながら言葉を続けた。
「貴方、もっと休暇を増やしても構いませんのよ。最近は半休を取っているけれど、半日とは言わず一日取っても問題ありませんの」
無論、嶺歌との事を応援したいがためにこのような提案を口にしているのだが、兜悟朗が本当に何を思って嶺歌に接しているのかは、主人である形南にも分からなかった。彼は嶺歌をどう思っているのだろう。
(特別……それは強く感じられるのですけれど)
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