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「平尾様!」
形南は可愛らしい佇まいをした平尾の姿を発見すると彼の名を大きく呼ぶ。
その様子を見て形南の事を興味本位で見てくる者も多数いたが、そのような視線は形南の気にするところではなかった。
そのまま形南に焦点を当てて顔を仄かに赤らめる平尾を見つめながら形南は気持ちが上昇していくのを実感する。
「あ、あれちゃん。お疲れ」
「お疲れ様で御座いますの! 本日は徒歩で河川敷ですのよね! 私とっても楽しみにしていましたの!」
今日は平尾に合わせてリムジンは既に帰宅させていた。ゆえにこの場にいるのは平尾と形南だけだ。
平尾とは河川敷を散歩して時間を過ごそうという素敵な提案をもらっており、形南は体験したことのないその時間に胸を躍らせていた。
形南にとって訪ねた事のある河川敷は、気分が落ち込んだ時に兜悟朗に連れて行ってもらっていた所しかなかった。
そして親しい者と二人きりで、それも遊ぶ事を目的とした河川敷の散歩というのはこれが初めての事である。
大好きな人である平尾と未知の体験ができる今日を形南はずっと楽しみにしていた。
そのまま平尾と二人で肩を並べて歩き出す。平尾とこうして二人で出掛けるのも一度や二度ではなくなっている。
確実に回数が増えているその事実に形南は嬉しい気持ちが生まれていた。
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