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形南と初めてのお出かけに選んだ場所はハリネズミカフェだった。
実は形南とは連絡を取り合っている際に偶然にも互いがハリネズミを好きである事を知ったのだ。
そこからはその動物の話題も増え、出掛ける際はハリネズミカフェに出向こうとそういう話になっていた。
目的地に到着した二人は兜悟朗をリムジンに残し、二人でカフェに入る。
中には数十匹ものハリネズミがゲージの中におり、可愛らしい仕草を見せる様々なハリネズミが二人を出迎えてくれた。
二人でそれぞれの料金を支払い、九十分コースを選択する。これなら思う存分堪能できそうだ。
「私、現地のハリネズミカフェは初めてですの。この子たち、愛おしくて堪らないわ」
「現地って……あ、屋敷に来てもらったって事?」
「そうですの! 一週間ほどハリネズミカフェワゴンを派遣させましてよ。けれど、現地の方が活気があっていいですわね」
形南は心底嬉しそうにそんな言葉を口に出すと受付で購入していたハリネズミ用の餌であるミミズを器用にピンセットでつまみながら餌を与え始める。
動いているミミズはお嬢様である形南には不釣り合いに感じる所があったが、形南は何も問題がなさそうに平然とミミズをつまんでいた。少し意外である。
そのまま二人は各エリアに設置されているハリネズミのゲージを一つずつ訪問し、多くのハリネズミ達と触れ合った。
軍手をした状態で店員の指示に従ってハリネズミを持ち上げたり、ミミズの餌を与えたり、観察して写真を撮ったりする。
二人で癒しの根源であるハリネズミに没頭しているとあっという間に時間は過ぎていった。
長いと思い込んでいた九十分は短く、名残惜しい気持ちが生まれるほどだった。
「ああ〜! 楽しくて仕方がなかったですの。ではそろそろお昼に向かいましょうか」
「ほんとあっという間だったね、ちょうどお腹空いてたからラッキー」
そんな話をしながらリムジンまで戻ると兜悟朗は二人が戻る時間を把握していたのかリムジンの前で既に立っており、目が合うと同時に丁寧なお辞儀をしてきた。
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