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「はい。また日を改めさせて頂こうと考えておりました。ですが本日はご予定がないようで安心致しました」
その言葉を聞いて喜んでいる自分がいた。
立ち去るところまでは嶺歌の想像通りだったが、日を改めてという事は今日がダメでもまた後日会いに来ようとそう思ってくれているという事だ。
嶺歌は口元が緩みそうになるのを抑えながら「そうなんですね」と言葉を返す。嬉しすぎて顔を上げる事が出来ずにいた。
「あ、の……今日はどこに?」
そうして嶺歌は再び質問をする。とにかく今は何か話したくて仕方がなかった。
「宜しければ嶺歌さんのご要望をお聞かせ願えませんでしょうか?」
すると兜悟朗は逆に質問を返してくる。
だが嶺歌はそれもまた嬉しく感じられていた。というよりも嶺歌の意見を聞こうとしてくれる彼のその姿勢が、まさに兜悟朗という一人の男性を体現してくれているかのようで嬉しかったのだ。
「最近有名なパンケーキ屋があるんですけど、そこはどうですか?」
嶺歌は兜悟朗と二人で飲食店に行くのが好きだった。互いに向き合う形でゆっくりと話ができるからだ。
とは言っても兜悟朗と二人であれば何をしても嬉しいことには変わりないのだが、せっかく意見を聞いてくれるというこの機会を逃したくはない。
すると兜悟朗は笑みをこぼしながら「勿論です。ではそちらに行きましょうか」と嶺歌の言葉に同意してくれた。
それだけで嶺歌は嬉しさが加速し、この時間がとても貴重であると改めて実感するのであった。
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