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最終下校時間の七時になると、これから夕飯を食べに行かないかと友人らに誘われるが、それを断り学校を飛び出る。
そうして校門の少し離れた先で、私服を身に付けた兜悟朗が待っている姿を目に映した。嶺歌はあまりの感動に瞳が揺れ動く。
「と、うごろうさん! お待たせしました!」
嶺歌は切れかけていた息を整えながら彼の元へ駆け寄る。
兜悟朗は柔らかな笑みを向けたまま「お疲れ様で御座います」と労いの言葉をかけてくれた。この一言で嶺歌の疲れは一気に消えていく。
すると兜悟朗はまだ少し息が荒い嶺歌を優しく見つめながらこんな言葉を口にしてきた。
「本日は再度のお誘いにも関わらずお受け下さりありがとう御座います。お受け頂けました事、とても嬉しく思います」
そう言って嶺歌に小さく微笑みかけた。彼のその言葉は紛れもなく兜悟朗の本心だろう。
嶺歌は恥ずかしげもなく繰り出される兜悟朗の発言に、嬉しい気持ちが湧き起こる。はいと小さく声を返すと兜悟朗はそんな嶺歌の視界に手を映して「あちらにどうぞお乗り下さい」と私用車を指し示してきた。
(今日も車で来てくれたんだ……)
兜悟朗が車で迎えに来ない日はないのだが、彼からの迎車が嬉しすぎる嶺歌としてはその一つの事で胸が高鳴る。
そのまま誘導され、彼からのエスコートを受けると嶺歌は兜悟朗と素敵な夕食を食べに現地へ向かうのであった。
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