28人が本棚に入れています
本棚に追加
美味しいと一言で片付けてしまうには勿体無いほどの美味な料理を胃の中に流し込むと再びリムジンに乗り込み二人でショッピングへ出掛ける。
しかし形南の行きつけのお店はどれも高級なものばかりで嶺歌には目がチカチカする程の場所であった。だが人生経験としてはとても良い刺激も受けていた。
社会人になり自分も稼げるようになった時は、ご褒美にこう言った服を買うのも良いのかもしれない。
実際、手につけられぬ値段のものしかなかったが、棚に丁寧に置かれた数々の衣服はどれも嶺歌好みのものばかりであったのだ。
嶺歌は昔からウインドウショッピングが好きだった。物欲はあるが、見て楽しむという娯楽を心得ているのだ。
だからこそ今回のショッピングはとても新鮮で楽しいものであった。であったのだが……
「ホラホラ遠慮なさらず。お好きなものを選んでちょうだいな」
「……」
何と形南はこの高級すぎる商品の中から好きなものを好きなだけ選べととんでもない事を言い出してきた。これは流石に予想外である。
いくらなんでも断る以外の選択肢がない。これを受けてしまえば、形南は友人ではなく、都合の良いカモの存在になってしまうだろう。そんな侮辱ともとれる行為はしたくない。
「あれな、気持ちだけ受け取っておくよ。流石に買ってもらうわけにはいかないからさ」
嶺歌は苦笑しながら手を振って否定してみせる。がしかし形南は「あら?」と口元に手を当てながらこんな言葉を返してきた。
「何も問題はありませんのよ。これは友好の証だなんて、申し上げるつもりはありませんの。こちらは貴女様にお手伝い頂いたお礼ですのよ」
「えっ?」
最初のコメントを投稿しよう!