第五話『友達とお出かけ』

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 そう言うと目が合った形南はくすくすと可愛らしく笑いながらもう一度目を合わせてくる。  彼女の瞳の奥は澄んでおり、綺麗で(まばゆ)い。形南はそのまま言葉を続けてきた。 「(わたくし)、貴女の性格はこの数日で把握しておりましてよ。何の理由もなく物を頂くだなんて友人としてあるまじき事。そう思っているのでしょう? ですが今回は私からのお礼の意味を込めていますの。だって貴女は私を平尾様と出逢わせてくださったのだもの」  形南は離れていた距離からゆっくりと近付いて嶺歌に手を伸ばす。彼女は再び握手を求めていた。 「ですから貴女にはお礼をしたいのです。高円寺院(こうえんじのいん)家の名に恥じない感謝をお送りさせていただきますわ」  彼女の真剣なその瞳を見て瞬時に理解する。形南は本気で言っている。自身の高円寺院家としてのプライドというものがあるのだろう。  まだ躊躇いがあったものの、これが彼女の一方的な善意ではなく、嶺歌がした事に対してのお礼だと知り、それならばお言葉に甘えようかと思い直した。  しかし魔法少女活動で一度として報酬を得た事がなかった為、このように誰かに改まったお礼をされるのは何だか不思議なものだった。 「分かった。じゃあお言葉に甘えてそうさせて貰うよ。ありがとうあれな」  そう答えると彼女は芯のある強い表情からパッと一転して明るいいつもの可愛らしいものへと変化した。  嶺歌が彼女の手を握り返し小さく握手を交わし終えると形南は嬉しそうな顔で「では早速、嶺歌のお好きなお洋服を探し出しましょう!」と意気揚々に歩き出す。  そんな彼女を見て嶺歌は形南には敵わないと思った。彼女は自分を一人の友人として好いてくれている。そう思える事が有り難く、嬉しかった。
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