第六話『予想外の訪問者』

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 形南(あれな)と出かけて以降、彼女と毎日のように会う事はなかったが、連絡だけは毎日取り合っていた。  そして嶺歌(れか)は魔法少女の活動を順調に続け、学校での友人とも放課後を楽しく過ごし平穏で充実する毎日を送っていた。  その日もいつもの様に休み時間を過ごしていた時だった。その時嶺歌はトイレを済ませ自身の教室へと戻っていた。  自分のクラスである一組の教室に足を踏み入れると何やら教室内が騒がしい事に気が付く。  教卓の前には数人の女子生徒が何かを囲む様にして集まっていた。  嶺歌は不思議に思いながら友人である女子生徒達に声を掛ける。  すると嶺歌の声に反応した女子生徒達はこちらの姿にいつもの陽気な笑みを向けてくると「聞いてよ嶺歌」と同意を求めるように言葉を発してきた。 「こいつがさー、嶺歌に用があるって言うけど実際どうなん? 知り合い?」 「ん?」  そう言って身長の高い一人の女子生徒が横にずれるとそこには何とひどく困惑した様子の平尾が立っていた。 「え?」  思わず声に出る。何故彼がここにいるのだろうか。いや、自分に用とはどういう事なのだろう。  どうやら教室が騒ついていたのは彼の存在が要因のようだ。  嶺歌は思いつく限りの事を頭で整理しているとその間にまた別の女子生徒がとある言葉を口にする。 「レカちゃん戸惑ってるじゃん。もしかしてレカちゃんに優しくされて勘違いしたクチ? いるよねそういう根暗な男って」 「ちょっと」  瞬間、嶺歌は思考を止め、彼女と平尾の間に割って入った。今の発言は聞き捨てならない。いくら友人と言えど許せない発言というものはある。 「今の心乃(ここの)の言い方は彼に失礼だよ。あたしも平尾君も対等な人間なんだよ? 平尾君に謝った方がいい」 「あ……ご、ごめんっ」  嶺歌は平尾を庇う形で友人――心乃の目の前に立つと彼女は瞬時に慌てた様子でペコペコと謝罪した。 「えっあ、いや……うん。全然」  シンと教室内が静まっているのを認識して自分達のやりとりが注目を集めている事に気が付く。  これ以上注目を集めるのは彼も本意ではないだろう。彼の額から大量の汗が滲み出ているのがその証拠だ。  嶺歌は「平尾君ちょっと来て」と口に出し彼を手招きすると平尾は困惑した状態のまま辺りを見回しこちらに近付いてくる。休み時間はまだ始まったばかりだ。  嶺歌はそのまま彼がついてくるのを確認しながら人気の少ない裏庭へ向かった。
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