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「レカちゃんさっきはごめん」
教室に戻るなり反省した様子の心乃はしょんぼりとした様子で嶺歌に謝ってきた。謝る相手は自分ではなく平尾になのだが彼女も根っからの悪人などではないという事をよく知っている。
嶺歌は「平尾君も許してくれてたし大丈夫だよ」と言葉を返した。その言葉に安心したのか心乃は心底安堵した様子で「よかったぁ〜」と声を漏らす。
「レカちゃんに嫌われちゃったらどうしようかと思ったあ〜〜次からは絶対あんなこと言わないからあ」
「だから大丈夫だって。平尾君はあたしの友達だから今度クラスに来た時は皆で囲むの止めてあげてね」
「分かった! レカちゃんはやっぱり顔が広いな〜」
心乃はずいぶん反省してくれたようで嶺歌はひとまず安心する。彼を庇う理由に形南の想い人であるからという理由は大きいが、それ以上に嶺歌は誰かを頭ごなしに否定する行為は好きではなかった。
ゆえに彼が形南と関係がなかったとしても今回のように対処していただろう。
「嶺歌の友達だったんだ。そういえば君付けしてるの珍しいよね」
すると嶺歌と心乃のやり取りを静かに見ていた詩茶はそんな事を口にした。普段嶺歌は男を君付けで呼ぶ事はしない。年上であれば先輩と敬称をつけ、同い年と年下相手には必ずと言っていいほどに呼び捨てで呼んでいる。
だからこそ詩茶もそこに違和感を覚えたのだろう。だがその理由は至ってシンプルなものである。
(あれなの好きな人だから、呼び捨てはちょっとね)
これは彼女に対しての敬意のようなものだ。嶺歌は形南の選んだ異性を可能な限り尊重していたい。そう思ってのことだった。
第六話『予想外の訪問者』終
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