第八話『招待』

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嶺歌(れか)、お迎えに上がりましたの」 「あれなおはよう。ありがとね」  翌日になると予告通り嶺歌のマンションまで形南(あれな)が迎えにきてくれていた。  嶺歌の挨拶に形南は嬉しそうに笑みを向けながら「ええおはようございますの」と言葉を返すとそのまま嶺歌の手を引いてリムジンへと誘導してくる。そしてリムジンの目の前にはいつものように丁寧な一礼をする兜悟朗(とうごろう)の姿がそこにあった。  嶺歌は彼に目線を向け「よろしくお願いします」と小さく会釈をした。これから形南の豪邸まで連れていってもらうからだ。すると兜悟朗は柔らかに口元を緩めると「安全にお連れ致します」と言葉を口にした。  彼の礼儀正しいお辞儀を正面から受けると形南が「兜悟朗、本日は(わたくし)がエスコートいたしますの」と言い、形南本人がリムジンの扉を開けてから嶺歌の方を嬉しそうに見てくる。 「ささ、嶺歌。どうぞお乗りなさいな」  彼女は無邪気な笑顔で嶺歌にそう告げてきた。これは彼女なりの友好の証なのだろう。 「ありがとう」  嶺歌は彼女の好意を素直に受け取り促されるままリムジンに乗り込んだ。その後兜悟朗が形南を車の中へ乗せ、最後に兜悟朗が運転席へと乗り込んでくる。  車が発進すると数十分程で形南の大きなお屋敷に到着するのであった。
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