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形南が暮らす自宅、いや誰もがお屋敷と呼ぶであろうその大きな家はテレビで見る何倍以上もの迫力があり、豪華以外に言葉が思い付かなかった。
(凄すぎる……)
嶺歌はあまりの豪邸さに呆気に取られていると形南は不思議そうな顔をして「どうされましたの? こちらですのよ!」と言葉を掛けてくる。この不思議そうな反応をみるに、形南は庶民を自宅に連れてくる機会がそうそうないのかもしれない。
嶺歌はうんと言葉を返すと彼女に案内されながら大きなお屋敷の中へと入っていく。後ろからは一定の距離を保って兜悟朗がついてきていた。
ここが形南の部屋だという扉をくぐると中には想像以上に広くて豪華な部屋がそこにあった。
美しく整えられた高価そうな物に加え、埃ひとつない綺麗な床。嶺歌は思わず感動して言葉を失っていた。
形南は部屋に入ると「こちらにお座りくださいな」といかにも高級そうなソファに嶺歌を案内する。通常であればこのようなソファに腰を掛ける機会すらないだろう。
彼女に促されそのままソファにそっと腰を下ろすと形南は嬉しそうな表情を更に和らげ、真向かいに座り始めた。
「それでは早速始めましょうか」
始めると言うのはお疲れ会だ。形南は事前に用意をしてくれていたようで、腰掛けたソファの前にあるテーブルにはすでにアフタヌーンティーと呼べるお菓子や紅茶の入ったティーカップなどが一式揃えられていた。
それを見て嶺歌は自前で用意していたある物を取り出した。
「あ、そうだ。一応……」
そう言って嶺歌は自身の持っていた紙袋からラッピングされたそれを手に取る。形南はキョトンとした様子で不思議そうに嶺歌の持つそれに目を向けていると「そちらは何ですの?」と疑問を口にした。
「お菓子作ってみたんだ。市販のものとか失礼かなって思って手作りなんだけど……ってあれ、考えたら手作りのがまずかったりする?」
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