第一話『謎のお嬢様』

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 授業が終わり、嶺歌(れか)は帰宅の準備を始める。毎日ではないが、放課後も依頼をこなす日は多い。  魔法少女システムとしては動ける時に動くという暗黙のルールがある。私生活を優先するのも時には必要だ。  その為必ずこの日に依頼を受けろという絶対的なルールはない。だがあまりにも働かなすぎると魔法協会から連絡が来るのである。  嶺歌はまだその事態を体験していないが、きっと魔法協会からの連絡は厄介なものに違いなかった。  それは長年、魔法少女を経験してきた嶺歌の確信めいた勘だった。 (今日は何件受けようかな)  そう考えながら通り過ぎる友人たちに別れの挨拶を返し、校舎を出る。  すると突然、名前を呼ばれた。  名前を呼ばれる事は日常茶飯事であるが、今のようにフルネームで呼ばれる事はそうそう無い。  嶺歌は声の主の方を見上げるとそこには麗しい程の顔立ちをした品の良さそうな女の子が立っていた。  彼女は今、間違いなく校門付近に停車している黒いリムジンから降りてきた。  後光が差しているとでも言いたくなる程のオーラを放つその女の子は、嶺歌より明らかに低い身長でありながらも美しい姿勢と言葉にし難い妙な風格を持ち、決して軽口で話し掛けてはいけないと、そう思わせる何かを持っている。  もしかせずとも目の前にいる彼女はお嬢様なのだろう。  嶺歌は彼女の風格に言葉を発せられず、ごくりと唾を飲み込む。  そのまま彼女を見据えていると再びこちらの名前を呼んできた。  しかし今度は――――耳を疑う単語と共に。
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