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第十話『告白とライバル』
「あ、和泉さん」
いつものように登校した嶺歌は教室の前の廊下で自身の名を呼ぶ平尾の姿を目に捉える。彼はどことなく慣れない様子でこちらにおはようと挨拶をすると小さく手を上げてきた。嶺歌は先日の兜悟朗の言葉を思い出す。
そして平尾に目を向けると挨拶の言葉を返した。
「おはよ。土日はあれなと連絡取った?」
形南の話題を取り入れる事にしたのは特に話題もない上に変に誤解されるような話題は避けておきたいからだ。現状、形南や兜悟朗を思うと彼を無視する訳にもいかない為、形南の話をするのが一番最適だと判断していた。
それに純粋に二人の関係性が気になるというのもあった。形南は平尾に対する隠しきれない愛を嶺歌に毎回語りかけてくれるが、平尾が彼女をどう思っているのかは分からない。出来れば二人が上手くいくように協力をしたい。そんな意図も持っていた。
「あれちゃんと? う、うん。昨日少しね」
(少し……)
実のところ昨日形南と解散をしてから夜の九時あたりに突然彼女からレインが届いていた。
形南からのメッセージは『平尾様とレインのやりとりがたくさん続きましたのっ!!! 嬉しかったのでどうしても嶺歌に報告したかったのですわ』という内容であった。彼女からすると意中の相手との連絡はたとえ少しのやり取りだったとしてもたくさんに思えるのかもしれない。
しかし平尾からすれば少しにしか感じていないというのは少々、気になるところではある。
「少しってどれくらい?」
「……えっ!?」
まさかそこを突っ込まれるとは思ってもいなかったのだろう。彼は途端に焦った様子を見せると分かりやすく首を左右に振り、挙動不審になる。その様子を見て嶺歌は彼に困る質問をしてしまったかと思考した。そしてすぐに先ほどの質問を取り下げる。
「答えなくていいや。あれな、あんたと話すの楽しいって言ってたよ」
去り際に形南の言葉を彼に伝え、小さく手を振って自身の教室へと戻る。平尾は追いかけてくることはなく、ただ小さく「そうなんだ」と言葉を漏らしていた。
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