第十話『告白とライバル』

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「平尾様がどのような結論を出されるのか、(わたくし)がこの目で確認をし、形南(あれな)お嬢様にご報告するのが今回御校に訪れた理由です」 (なるほど……あれな、やっぱり心配なんだ)  それはそうだ。自身の意中の相手が、どこの誰とも分からない相手に告白をされるのは気が気ではないだろう。形南は今心が穏やかではいられない筈だ。今の説明で兜悟朗(とうごろう)がこうして学校に来ている理由も判明した。  だがしかし、どのようにして平尾が告白される事を知ったのだろう。嶺歌(れか)はその疑問をようやく説明が終わった兜悟朗に投げると彼は小声のまま答えを口にした。  どうやら形南が平尾とまだ知り合う前、彼に恋人がいたら大変だと心配した形南は事前に平尾の交友関係を調べるよう兜悟朗に命令を下したようだ。  その際に判明したのは、恋人はいないものの彼に好意を寄せている存在――つまりライバル(恋敵)がいる事が判明したのだ。  幸いだったのは平尾との関わりはほぼなく、彼女の一方的な片思いだという事も分かったようだが、常に警戒をしていたのだと言う。  そして今日、平尾に告白をするという話が一部の女子生徒達から浮上したのだ。兜悟朗はすぐに形南に報告をし、形南はその告白を目視してくるようにと口にしたようだった。  邪魔をするのではなく、ただ隠れて見たそのままの光景を報告しなさいと命令した形南の台詞を兜悟朗づてに聞いた嶺歌は彼女らしいと素直に思った。本当であれば邪魔をしたくて堪らない状況だろうに。ライバルであろうと決して邪魔はしない。その点が形南の品格の高さを強調していた。 (うーん……でも……)  情報がダダ漏れではなかろうか。あまりにも学校の情報が筒抜けすぎる。自分が告白する事を他者に知られていたらと思うと恥ずかしいどころの話ではない。  いや、しかしそれが兜悟朗が如何に万能で完璧な執事であるかの証明となっているのだろう。  この学校のセキュリティはそこまで馬鹿ではない。魔法少女でもある嶺歌は自身の通う学校のセキュリティ状態も入学する前に確認済みである為その点においては断言できるのだ。しかしそれを上回るほどに兜悟朗が有能すぎるのだ。  本当に人間なのだろうかと疑ってしまいたくなるほどの完璧具合に嶺歌は思わず彼を見上げた。だがそこで嶺歌は思い出す。今、自分は兜悟朗と著しく距離が近いのだという事を――――。
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