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(う、うわあ……………)
そこで初めて嶺歌は己の置かれている状況を本当の意味で理解し、自身の身体中の熱が一気に膨れ上がるのを感じた。今間違いようもなく自分は顔が赤くなっている。
ドッドッと五月蝿く高鳴る心臓は、兜悟朗に聞かれてしまったらどうしようという不安を起こさせる程に上昇し、嶺歌は顔を俯かせる事しか出来なかった。平尾と女子学生が取り込み中の今、離脱をする事は無理な話だった。
するとそんな嶺歌の様子に気が付いたのか、兜悟朗はそっと掴んでいた嶺歌の肩に置かれた手を離して小声で再び謝罪の言葉を口にした。彼の声は酷く申し訳なさそうだ。この状況は兜悟朗自身も本意ではないのだろう。
嶺歌はコクリと小さく頷くと彼はそのまま言葉を続ける。
「貴女様にこのような羞恥、本当に申し訳御座いません。ですがご心配には及びません。形南お嬢様にお誓いして貴女様に決してこれ以上の無礼は働きません。ですからどうか、もう暫くの間ご辛抱頂ければと思います」
自分は今どれほど顔を赤く染めているだろうか。彼の一言一句紳士的な言葉に嶺歌はただただ頷く事しか出来なかった。
平尾と女子学生の関係を見届けなければと思っていたのに、今の自分はそれどころではなくなっている。この紳士な執事に身体を預けながら自分の赤面がこれ以上彼に露見しないようにと祈るほかなかったのだ。
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