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「魔法少女の和泉嶺歌さん。貴女にご協力願いたく参りましたの」
「…………え」
思わず声が出た。なぜこの女の子は、嶺歌の本名と、自分が魔法少女である事を知っているのだ。
それに明らかにどこかのご令嬢であるこの女の子が平凡な嶺歌に声を掛けている理由も分からない。
予想外の事態に嶺歌は混乱する。
するとそんな嶺歌の様子を察したのか彼女は笑みを零しながら再び口を開く。
「突然のご訪問、申し訳ありませんの。宜しければあちらにご同車なさらない?」
そう言って彼女が視線を向けたのは先ほど彼女が降車した黒いリムジンだった。リムジンなど、直に目にしたのはこれが人生で初めてである。
魔法少女といえど決して裕福な暮らしではない。高級車とは無縁の人生だ。
嶺歌は困惑した表情を見せながら「でも……」と断ろうとしたが、女の子は「ではこちらへ」と嶺歌の返事を聞かずに話を進め、こちらの腕を引っ張ってくる。彼女の力は小柄な見た目に反して意外と強かった。
振り解けない程ではなかったが意外に感じた嶺歌はその事に気を取られ、そのまま彼女に車の中へと連れて行かれた。
いや、これは拉致られたと言っても間違いではないだろう。
ほぼ無理やりに車の中へと押し込められ、そのまま嶺歌は行き先の分からぬまま謎のお嬢様に連れ去られてしまった。
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