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第十一話『予兆』
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あの時感じたのはただ驚きと衝撃のみだ。彼の事は好きでもなかったが、未来の伴侶として共に生涯を歩むのだと信じて疑わなかった。
それゆえに裏切りと呼ぶ以外に言葉が見つからないあの光景は自分にとって残念でならなかった。彼自身には勿論、彼を唆したであろう彼女に対してもそれは同じ思いである。
未練などない。記憶を抹消して今すぐにでも忘れたいのだ。しかし問題は――――
「アレが通りがかるのは、我慢なりませんの」
二度と見たくもない顔が、毎日のように現れる。悪夢のようでこれは現実だ。形南はそれが酷く苦痛でならなかった。
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