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『嶺歌、本日は御校までお迎えにあがりますの』
今朝方この文章に可愛らしい絵文字を添えて送られてきたメッセージだ。形南らしい絵文字が嶺歌の口元を自然と緩ませてくる。
結局週末の土日は形南の都合が合わず、平日の放課後に彼女と会う事になった。嶺歌自身は魔法少女活動も順調である事から特に不都合はなく、そのまま本日の放課後に彼女と合流してお茶をする予定となっている。
今回は嶺歌おすすめの喫茶店でのんびり女子会をする予定だ。自分のお気に入りのお店を友達の形南と行ける事が嶺歌にとって嬉しく、放課後に向けて気分は高まっていた。
放課後になると掃除当番である嶺歌は掃除を手早く済ませ、急いで校舎を出る。すれ違う多くの生徒に声を掛けられ言葉を返しながらも嶺歌の頭の中は放課後の約束で埋まっていた。
下駄箱で靴を履き替え、そのまま校舎付近に停車する黒いリムジンに足を向けると嶺歌が到着するよりも先にリムジンの扉が開かれ兜悟朗が嶺歌の前に現れる。
彼は一礼をしてからリムジンの扉を開けると嶺歌は礼を告げながらその車の中へと入っていった。形南は約束がある時はいつも兜悟朗の運転する車で嶺歌を迎えに来てくれる。
お迎えというこの状況に慣れない心境は未だに持っており、こそばゆい思いは健在していた。
迎えは大丈夫だといつも告げているのだが、形南はこれが一番早く合流できるからと毎度こうして迎えに来てくれていた。反論の言葉が見つからないため彼女の意見に賛成しているが、有難いという気持ちは回数を重ねるごとに大きくなり、嶺歌はどこかで形南に日頃のお礼をしようと考えるようになっていた。
(あれなが喜びそうなものって何だろう)
形南とは知り合ってからそれなりに濃い付き合いをしてはいるものの、いまだに彼女の好みまでは把握できずにいる。強いていうなら、平尾のような男がタイプという事くらいだ。お返しの参考には全くならない情報である。
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