第十一話『予兆』

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 形南(あれな)との女子会が終了し、嶺歌(れか)は再びリムジンに揺られていた。解散をする前に、一度形南に自宅で見せたいものがあるのだと言われていたのだ。 (見せたいものって何だろう)  そう思いながら嶺歌の気分は高まったまま、あっという間に形南の家である豪邸に到着する。リムジンを何台重ねても埋まることのなさそうな城とも呼べる豪邸の近くに車が停車するといつものように兜悟朗(とうごろう)が形南を車から降ろして次に嶺歌を降ろしてくれる。  彼にエスコートされるのもこれで何回目だろうか。何故か未だに彼の手に自身の手を重ねる事は慣れなかった。  車から降りた嶺歌と形南はそのまま規模の大きい玄関に向かい歩き始めると唐突に形南が「そうだわ!」と両手を『パンッ』と叩き、大きな音を立てる。 「どうしたの?」  嶺歌はすぐに問い掛けると形南は嬉しそうに口元を緩ませながら「門を出たところにも見てほしいものが御座いますの!」と言葉を口にしてきた。形南はそう告げると兜悟朗に向かって再び口を開く。
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