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「やっと、地震が収まったぜーーー! 光! 無事か?! それにしても、なんだったんだろ? あの綺麗なお姉さん? いや女神か? 影の世界へようこそって?!」
「おにいちゃんこそ……無事? それよりおにいちゃんと私の影が消えちゃった……影の世界だから? ねえ、おにいちゃん?」
「おう! なんだかそんな感じだな!」
俺は未だカクカクとした足と腰を安定させる。
今は自分の影と光の影のことはまったく気にしなくてもいい。
それよりも、周囲の建造物や桜の木々はグラついただけでなんともなかった。桜の花弁もひらひらと普通に舞い落ちている。ほんとに有難いや。けど……。
「おにいちゃん。何か変よ? 避難勧告もないし……」
「あれ? そういや、なんで誰も外へ逃げてないんだ? 大きな地震なのに! おーい、町民ーー! みんなまだ寝てるのかーーー?? 夜だけど朝の7時ッスよーーー!!」
俺は比水公園から近くの住宅街に走っていくと、すぐそこの民家のドアをドンドンと叩いた。
パリッとした背広姿のおじさんが平然とでてきた。こちらを不思議そうに見つめている
「なんですか? あなたたち?」
「ええと、酷い地震だったので、大丈夫かなーと……避難勧告はでていませんが、まだ余震の可能性もあるかと……避難した方がいいかと……」
「え、地震? そんな揺れはなかったな。おーい、裕子。今、地震なんて起きたか?」
おじさんは後ろを向いて、多分この人の奥さんに地震のことを聞いたのだろう。
「え、地震? 何も起きてないわよーーー! きっと、小さい揺れだったのよ!」
家の奥にいる奥さんも、平然とした声を返してきた。
「大丈夫だよ。何も起きていないよ」
「ええ?! あ、すいませんでした!」
「お騒がせしましたー!」
俺と光は急いで踵を返すと、一旦家に戻ろうと光が言った。
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