第一章 近所を見に行こう

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「やっと、地震が収まったぜーーー! 光! 無事か?! それにしても、なんだったんだろ? あの綺麗なお姉さん? いや女神か? 影の世界へようこそって?!」 「おにいちゃんこそ……無事? それよりおにいちゃんと私の影が消えちゃった……影の世界だから? ねえ、おにいちゃん?」 「おう! なんだかそんな感じだな!」  俺は未だカクカクとした足と腰を安定させる。  今は自分の影と光の影のことはまったく気にしなくてもいい。  それよりも、周囲の建造物や桜の木々はグラついただけでなんともなかった。桜の花弁もひらひらと普通に舞い落ちている。ほんとに有難いや。けど……。 「おにいちゃん。何か変よ? 避難勧告もないし……」 「あれ? そういや、なんで誰も外へ逃げてないんだ? 大きな地震なのに! おーい、町民ーー! みんなまだ寝てるのかーーー?? 夜だけど朝の7時ッスよーーー!!」  俺は比水公園から近くの住宅街に走っていくと、すぐそこの民家のドアをドンドンと叩いた。  パリッとした背広姿のおじさんが平然とでてきた。こちらを不思議そうに見つめている 「なんですか? あなたたち?」 「ええと、酷い地震だったので、大丈夫かなーと……避難勧告はでていませんが、まだ余震の可能性もあるかと……避難した方がいいかと……」 「え、地震? そんな揺れはなかったな。おーい、裕子。今、地震なんて起きたか?」  おじさんは後ろを向いて、多分この人の奥さんに地震のことを聞いたのだろう。 「え、地震? 何も起きてないわよーーー! きっと、小さい揺れだったのよ!」  家の奥にいる奥さんも、平然とした声を返してきた。 「大丈夫だよ。何も起きていないよ」 「ええ?! あ、すいませんでした!」 「お騒がせしましたー!」  俺と光は急いで踵を返すと、一旦家に戻ろうと光が言った。
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