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第5話 疑いの目と王宮
私は転移させられそして私利私欲のために利用されたことを理由に、そしてユリウス様はそんな私を助けたいという思いで共闘をすることになった。
まず、私と彼は通じ合っていない、協力をしていないふりをすることを前提に、ある連絡手段を考案して実行していった。
王妃側につく王宮の人間にバレないように、執事長の通称じいじが私に手紙を差し出し、その内容にYESならため息、NOならあくびを一つして合図を送って意思疎通を図る。
私から話がある場合は書庫室にある決まった本の27ページ目に手紙を書いて挟み、書庫室長に合図をした。
私が主に王妃以外の人間の切り崩し、そしてユリウス様は外出を伴うような調査、下調べや証拠集めをしていく方針。
こうして二人で王妃と第二王子エリク様を王宮から追放する証拠と手筈を整えていくことにした。
その方針に決まった数日後、私はエリク様からの誘いでお庭で二人きりでお茶をすることになった。
これはエリク様から証拠や証言を聞き出すチャンスだと思い、気を引き締めて望んだ。
そんなこととはつゆ知らず、エリク様は私が先に待っていたガゼボに優雅に登場する。
「待ったかい?」
「いえ、今来たところですわ」
エリク様が座るとメイドのリアが紅茶を注ぎ、私と彼の前に置く。
香りから推測するに今日はオレンジのフレーバーティーらしい。
こんな優雅な時間に思える今この瞬間も私の脳内はエリク様への警戒と戦略でいっぱいだった。
「最近はどうだい? リアから聞いたんだが最近よく風邪を引いているらしいじゃないか」
「ええ、少し気温差でまいってしまったようでして」
「そうかい、あまり無理はしなくていいからね。君は私の妃になる準備だけしてくれればいいから」
「はい」
たまに感じるこのヤンデレとでもいうのだろうか、このお前は何もしなくていいからと言われているようなそんな印象を受ける言葉を彼はたまに言う。
これは天然なのかあるいは私に余計な事をさせないように牽制しているのか、どちらなのか。
さあ、見せてもらおう。
あなた様の本性とやらを……。
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