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数日後、帰還儀式の準備が整い、私とユリウス様は地下室にいた。
ここに来るまでに王やイレナなど、新しく関わってくれた人にも別れの挨拶をしてきた。
半月ほどではあったけれど、本当によくしてもらった。
「ユリエ、この魔法陣の真ん中に立ってもらえるか?」
「はい」
「では、儀式を始める」
ユリウス様は私が魔法陣に立ったのを確認すると、自らの手を短剣ですーっと切って、そこからぽたりと血が流れる。
「ユリウス様っ! 血がっ!」
「大丈夫です、少しの血で大丈夫ですから」
ユリウス様の血がぽたりと魔法陣に落ちた瞬間、眩い光が現れて魔法陣は光り出し、そして私を包み込んだ。
あ、もう帰るんだ。
これが最後、ユリウス様と会えなくなる……。
そう思っていると、ユリウス様が私に一歩近づいて声をかけてくる。
「ユリエ、今までありがとうございました。一緒にいれたこの一年、楽しさだけではないけれど、いい一年でした」
「ユリウス様……」
私の目に少し涙がたまり始めて、それがいつの間にかぽたりと落ちた。
「最後だから言います。私はあなたが好きでした」
「──っ! 共に闘う相手としてだけでなく、女性としてあなたのことが好きでした」
その言葉は私の感情を爆発させるのに十分で、私も叫ぶように伝える。
ああ、もうユリウス様の声も遠くなってきた。早く。早く、伝えないと……!
「私もあなたのことが好きでしたっ! 私自身を見てくださったこと、優しくしてくださったこと、嬉しかったです!」
「ユリエ……!」
ユリウス様は顔を歪めて私が白い光に包まれるのをじっと見つめていた──
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