第24話 二人の王子

1/1
前へ
/52ページ
次へ

第24話 二人の王子

 ユリウス様と共にコーデリア国を去るときがやってきた。  私は自分用に貸し出されていた部屋を後にしようとしたところ、ノックする音が聞こえて返事をする。  部屋に入ってきたのはレオだった。 「レオ様……?」 「もう帰るのか」 「はい、本当にお世話になりました」 「いや、迷惑かけたな。いろいろ」 「いいえ! こちらこそレオ様には良くして頂きました。ありがとうございました」  お辞儀をして顔をあげようとした瞬間、がばっと勢いよく抱きしめられた。 「レオ様っ!?」 「なあ、本当に俺の妃にならないか?」  私の髪ごと頭を支えて、もう一つの手に腰を強く引き寄せられている。  彼のあたたかさを感じた。  最初は彼のことを敵だと思って苦手だった。  だけど、彼の優しさをどんどん知っていった。  妹思いで、私のことも大切にしてくれて……。  でも……。  私はそっと彼の胸を押し返して目を見つめる。 「ごめんなさい、私はあなたの妃になれない。私は……」 「あいつか」  「あいつ」がユリウス様のことだとわかって、私はゆっくりと頷く。 「ユリウスが表で待ってる。行け」 「レオ様……」 「もしあいつに泣かされたら、俺のところに来い。いつでも来ていい」  私は笑みを浮かべて再び頭を下げると、彼と別れた──  王宮の玄関口に向かうと、馬車の傍でユリウス様が待っていた。 「ユリエ」 「お待たせしました!」 「帰ろうか」  そうして差し伸べられた手を取った。  馬車の中で私はコーデリア国での思い出を浮かべながら窓の外を見ていた。  すると、手に温かいものを感じて振り返る。 「ユリウス様?」  私の手に彼の手が重ねられていて、さらにその手は彼の唇に寄せられていく。  照れてしまって顔を赤くする私に追い打ちをかけるように、ユリウス様はわざとちゅっと音をたてる。 「あなたが心配でたまらなかった。無事でよかった」 「ご心配、おかけしました。私もその……」  私は少し恥ずかしい気持ちを抑えて、勇気を出して告げる。 「会いたかったです、ユリウス様」 「ユリエ……」  じっと見つめられた瞳に吸い寄せられるように、私と彼の距離は近づいていく。  そうして、目をつぶった少しあとに、唇に柔らかいものが触れた。  彼とまた過ごせる。  その幸せを思いながら、クリシュト国へと戻った──
/52ページ

最初のコメントを投稿しよう!

326人が本棚に入れています
本棚に追加