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いやいや、わたくしはエリクさまと婚約して王太子妃教育を受けていて、王妃のアンジェラさまとお茶をいつもご一緒していて……。
そんなわけないっ! だって、一生懸命勉強頑張って入った高校の卒業式に幼馴染のまきちゃんと写真撮って、それからそのまま家に帰る途中に……あ……れ?
家に帰る途中に猫を見かけて、それで神社に入ってから……それから……
私はゆっくりと隣にあった大きな姿見を見つめて呟く。
「黒髪に茶色の目……私に間違いない」
私は間違いなく『神崎友里恵』だ。
でも、確かに『リーディア・クドルナ』でもある。
あ……思い出した……。
私は卒業式の日に神社で白い光に包まれて、気づいたら暗いじめじめとした鉄格子で囲われた部屋にいた。
ハロウィーンの仮装でしか見ないような黒いフードを深くかぶった魔術師みたいな人がぼそぼそと何か呟いたら、ぱたりと現代の記憶がなくなった。
代わりにあったのはここで18年間『リーディア』として過ごしたという『偽りの記憶』。
侯爵家の生まれも、王妃とのお茶会も、エリク様との出会いも、そしてあの墓石に誓った婚約も嘘……。
そうか、私は何者かに現代から異世界であるここに転移させられ、偽りの記憶を埋め込まれて「わたくし」になって一年を過ごしたんだ──
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