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君がいたから…
「次は、緑町二丁目、緑町二丁目、お降りのお客様は、お知らせ下さい。」
緑町二丁目のバス停から、徒歩5分。
俺が幼少期に遊んだ、この場所と思い出は、俺の大切な宝物だ。
「あっ、やっと来た。遅いよ。こっちは、5分も前から待ってるのに。」
俺を見ると、すぐに寄ってくるのは、変わってないな〜。
そんなことを思いながら、一緒に公園の中へ足を踏み入れた。
「深心しん、高校で何か困ったことない?大丈夫?僕がいなくて寂しくない?」
相変わらず、心配性で、甘えん坊な奴だな。
「大丈夫だよ、眩惹かい。そっちこそ、俺がいなくて寂しくないのか?w」
「寂しいに決まってるじゃん。分かってるのにわざとからかってるでしょ。深心だって、寂しいなら、正直に寂しいって言えばいいのに。」
「はいはい、そうですよ。眩惹がいないと寂しいですよ。」
「僕もだよ。深心〜。」
「ちょっ、お前。高校生にもなって、そうすぐに抱きつくな。恥ずかしい。」
「え〜、いいじゃん、久しぶりにあったんだから〜」
そんなこと言いながら抱きついてくる、眩惹は暖かくて、懐かしくて、泣きそうになった。
「ねぇ、深心。覚えてる?僕がここに引っ越して来たときのこと。」
喋り初めてからしばらくたったとき、ふと、眩惹が聞いてきた。
「忘れるわけないだろ。眩惹と出会った日なんだから。」
保育園を卒園して、3日がたった日。
1人で遊ぶことが好きだった俺は、あの日、この公園で、静かに砂遊びしていた。
しばらくして、休憩していたときに、かわいい顔をした男の子がこの公園へ来た。
同じぐらいの年齢なのに初めて見る顔だった。
もともと対して有名じゃないこの公園は、来る人がほとんど近所の人。
保育園でも見たことがなかったことに気になった俺は、その男の子に話しかけた。
「ねぇ、君、この近くに住んでる?」
その子は、話しかけられたことにかなり驚いたらしく、
「うん」
とだけ答えると、俯いた。
流石にこの辺の子なら、会ったことがあるだろうと必死に思い出そうとしていると、
「でも、最近ここに来たばかりだから、会ったことないと思う。」
その子は、小さな声で呟いた。
「そういうことか!見たことないと思ったんだよね〜。俺、しん。6歳。」
「同い年だ…僕、かい。」
「かいくんって言うの?よろしく、かいくん。」
そのとき初めて、その子…眩惹と目があった。
それが眩惹との初めての出会いだった。
「あのときさ、凄く不安だったんだ。知らない人、知らない場所、全てが謎に包まれる感じだった。
でも、ここで深心が話しかけてくれて、嬉しかった。」
「深心、あのとき僕に話しかけてくれてありがとう。」
「俺も…」
「え?」
気づいたら自然と声が出でいた。
「あのとき、眩惹に会えて良かった。中学生卒業したら引っ越すことになったとき、もう前までみたいに会えなくなるのも嫌だったし、好きだったここから離れることになるのも嫌だった。でも、眩惹が俺の背中を押してくれた。大丈夫、いつでも会いに来てって、そう言ってくれてホントに嬉しかった。だからさ…」
「ありがとな眩惹」
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