新婚初夜の怪獣

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「ねえ、あなた」 「何だい?」 「今日は何の日か、覚えている?」 「覚えているとも。結婚した後、君と初めて交わった日だろ」 「ご名答。あなたとの新婚初夜、とても楽しく、ロマンチックで、幸せだったわ」 「そして、凄かった。君のそのグラマラスな体が、より一層美しく輝いて見えたよ」 「そういうあなたの引き締まった体も、しっかりと輝いていたわ」 「有頂天になった俺は、君の富士山のように大きな山が作り出す深い谷間に、思わずダイブしてしまった」 「その後の、あなたの腰つきも凄かったわね。動きが早すぎて、たくさんあるように見えたわ。さしずめ、頭がたくさんあるヒドラと、足がたくさんある頭足類の中間ってところかしら。あるいは、八岐大蛇(やまたのおろち)の逆」 「はははっ! 大げさな」 「大げさじゃないわよ。本当に残像が見えていたんだもの。あの時のあなたなら、分身の術だってできたんじゃないかしら」 「そこまで言うか。でも、俺が発射した愛のミサイルを受け止めた君も、大概だと思うぞ」 「ふふふ……。そうかしら」 「そして、それを受け止めた君は……」 「あら?」 「どうした?」  妻が視線を向けた方を見ると、そこには息子がいる。トイレに行くために起きたのだろうか。  (うわさ)をすれば影とは、よく言ったものだ。  件の新婚初夜の賜物が、今、目の前にいるのだから。
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