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しばらくすると、美咲はお手洗いに行くと言って席を外した。
「バーテンダーさん、素敵なカクテルありがとうございます。彼女、気に入ったみたいです」
「それは光栄です。お誕生日だとあらかじめ聞いていたなら、他にも色々とさせていただけたんですが」
話しかけてきた男性・達也に、樹は笑顔で快く応えた。
「付き合って一ヶ月なんですけど、距離を縮めたくて。僕は二十六で、大人のデートができるようになったら一緒に来たかったんですよね」
彼女が十九歳の時に参加してきた合コンで知り合ったらしい。
すぐに意気投合して付き合い始めたのだそうだ。
二十歳になって初めての酒が、あんなに度数が高くて大丈夫だったのだろうかと樹は考えていた。
年下の彼女は可愛いだのなんだのと達也がのろけているのを聞きながら、樹も心の中に汐里を思い浮かべていた。
年上も悪くはなかったが、年齢に関係なく「汐里」が可愛いと思えるのだ。
達也の話が続く中、口元をほんのり緩めていると美咲が戻ってきた。
「ねぇ~達也くん、眠いよぉ~」
「え、そう?」
「うん、なんかふわふわしてる。お酒のせいかなぁ?」
彼女の頬はほんのり赤く染まり、店にやって来たときより瞳もうるうるして可愛く見えた。
「オレが一緒だから平気だよ。そろそろ出る?」
そう言いながら達也が席から立ち上がり会計に進もうとした時、美咲はよたよたして彼の腕にぎゅっとしがみついた。
「美咲ちゃん、大丈夫?」
「う~ん……ダメかも……」
達也はちらりと一瞬だけ樹の方を見た。
「……オレんち、泊まる?」
「……行ってもいいの?」
達也はそのまま会計を済ませて美咲と一緒に店を出て行った。
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