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マンションの部屋に戻り、シャワーを浴びて濡れた身体と髪をタオルで拭く。
歯磨きをしながら鏡に映った自分の顔を見て、樹は考えていた。
(しおりんとの距離かぁ……)
今日店にやって来たカップルは付き合って一ヶ月だそうだ。
樹と汐里は、知り合ってから数年経過している。
付き合ってからも二、三ヶ月は経つのだが、特に何ら変わりなく過ごしている。
手を繋いだだけで顔を異常なくらい真っ赤にする汐里だ。
ようやく少し慣れてきたところだというのに、それ以上いいものだろうか。
顔を近づけると目を回してしまうし、ましてやオトナの階段など上ろうとすればどうなることやら。
あらゆることから判断しても、汐里はそういったことに免疫がないのであろう。
それはそれで汐里らしくて良いし、自分が最初であれば嬉しいと感じてしまう。
今日のカップルのように、女の子の方からきっかけを作ってくるのであれば話は早いのかもしれないが、正直言って汐里にはそうはなって欲しくないとも思っている。
付き合い始めた頃、汐里が樹の店に友達と三人でやって来たことがあった。
酒に弱い汐里は、カクテルを飲んで少し酔って樹に抱きついてきたのだが、如何せん仕事中だったことと、外にいたということで樹は自制したのだった。
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