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兄妹とチャーハン3
ガシャン!
リビングに大きな音が響いて、遥香とその兄の大雅がテーブルの足許を見た。そこには割れた赤色のマグカップが落ちていた。持ち手は取れ、粉々になった破片は遠い壁の方まで飛び散っている。
「これ……」
大雅は思わず、フローリングに膝をついた。バラバラになったマグカップの欠片を拾い上げる。
「何やってるんだよ!」
大雅は膝をついたまま、正面に座っていた遥香を見上げた。
「ごめん、お兄ちゃん」
「それでは済まないんだぞ!」
「分かってるよ。ごめんってば」
「ちゃんと周りを見ろ。テーブルの端っこにマグカップが置いてあったら手が当たることも想像できただろ!」
「ごめんなさい」
「それに、これは俺の大事な……」
遥香はそこで謝り続ければいいものを、プツと切れてしまった。
「ごめんって言ってるでしょ!」
「謝られてもカップは元に戻らないんだ!」
「お兄ちゃんが気を付ければ良かったでしょ! 大事なものなら最初から落ちないところに置いてよ!」
「そばにあったんだからお前が注意すべきだろ!」
「何、それ! 責任転嫁するの!」
「それはこっちの台詞だ!」
こんな言い合いをするうちにいつの間にか遥香と大雅は取っ組み合いの大喧嘩を始めてしまった。いい歳した大人が全力で肩と肩を掴み合って、隣の部屋から苦情がくるかもしれないと思うほど、大声で言い合いをするのであった。
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