兄妹とチャーハン5

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兄妹とチャーハン5

 遥香と大雅の電話はかなり時間が掛かって、切れたころには三十分経っていた。テーブルの上のチャーハンからはもう湯気なんてとっくの前に出なくなって、すっかり冷めてしまっている。  結局、電話の一件でコンロの掃除はなくなって、朱梨たちは電話が終わると代金を貰ってからすぐお暇することになった。  帰ります、と伝えると、遥香は玄関まで見送りにきた。 「ごめんなさい。せっかく持ってきていただいたのに温かいうちに食べられなくて」  玄関で靴を履く朱梨たちに遥香が言った。 「別にいいんだよ。それより、遥香さん、これでまたお兄さんのチャーハンが食べられるね」  奈海が床をこつこつとつま先で叩いて靴を履きながら答えた。 「はい」  遥香はとても清々しい表情をしていた。本当に良かった、と朱梨は安堵する。 「あと、はい、これ。うちの割引券」  奈海はポケットから二枚のチケットを出した。今時珍しくなりつつある紙の割引券だ。カフェ・ツリーハウスは外見だけではなく、中身まで昔懐かしい。 「いいんですか?」 「もちろん。今度はお兄さんと来て。美味しいチャーハン用意して待ってるから」 「分かりました。ぜひ伺います」  しっかり営業を忘れない奈海だ。割引券を貰った遥香も嬉しそうだった。  朱梨たち二人はもう一度お礼を言って、門口宅を後にした。
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