そしてわたしは汲みはかる

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針のように細く、しかし鋭いオフェンスが相楽を貫いた瞬間、背後から「お疲れ様でーす」と声を掛けられる。肩を弾く。軽く会釈を返すだけで、息が止まりそうだった。同じく、相楽の息もしばらく音を鎮めていた。 「巻き込む、って……私、そんなつもりは全く、」 切り出された声は、震えていた。 「ああ……今回の依頼の件なら、あまり気になさらないでください」 「え?」 「故意か、そうでなくとも……依頼があやふやなケースはいくつもありますし」 静かになった相楽に畳み掛けるような、一見優しげな含み笑いが、盛大な皮肉だと判る。 「———誰にだって、失敗はつきものですから」 そして放たれた締めくくりに、背にもたれて脱力した。どうやらわたしは、三鷹郁也を甘く見ていたらしい。 その後(おそらく彼が)椅子を引く音から体を遠ざけるまで、そう時間はかからなかった。 「では……今後もクロレ・ルモンドをよろしくお願いします。また機会があれば、ぜひお声がけください」 「えっ……ま、待って……そうだ、これからランチ行かない? せっかく静岡まで来たんだし、行きつけのお店とか教え———」 「今日は『たまたま』『会合のついで』、だったのでは?」 「いや、でも……」 「すみません。今回は……いえ、食事は今後もお断りさせてください」 立ち去り際、狭い箱のなかから漏れた最後の言葉を、わたしはしばらく反芻していた。
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