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海棠はタイピンを手のひらに包み込み、もう片方の手で比嘉の頬をそっと撫でた。
「へえ? そういうのは分からないんじゃないのか」
優しく聞いたら、比嘉が言葉に詰まった。顔を赤くして、所在なくシャツの胸元を片手でつかんでうつむいてしまう。少しばかり意地悪なことを言ってしまったようだ。
「プレゼントありがとう。嬉しいよ」
「……うん」
目を伏せがちに頷いてそっぽを向いた比嘉の口元がわずかにほころぶ。出会った頃からほんの少しも色褪せない、綺麗な横顔だった。
海棠はタイピンを丁寧に箱にしまうと、こほんとひとつ咳払いした。
「…それで、このあとの予定なんだが」
きょとんと顔を上げた比嘉に、海棠はとびきり甘く微笑してみせた。
「このまま押し倒した方がいいか? それとも目が覚めたんなら食事に行くか?」
「…っ、ど、どっちでもいい…!」
至極真面目に恋人の希望を尋ねたつもりだったが、比嘉は真っ赤になって枕を投げつけてきた。ぼすっと片手で枕を受け止めて、海棠は柔らかくほほ笑む。どっちも嫌だ、とは言わなかった比嘉のことが、愛しくて仕方なかった。
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