プロローグ

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初春に引っ越してきて、もう2ヶ月は経つ。面倒くさがる比嘉の代わりに、部屋の契約手続きはほとんど海棠がやったし、引っ越し業者の手配から家具や寝具の用意まですべて海棠の手によるものだ。それなのに、比嘉は自宅で寝た回数より、研究棟の仮眠室に寝泊まりした回数の方が多いに違いない。 いっそ海棠が比嘉の自宅に住みたかった。居心地がいいように最大限に気を配って準備したのに、埃を積もらせるだけなんてもったいないだろう。 比嘉のマンションの前を通り過ぎて、予約してある店へと向かいはじめて幾らも経たないうちに、すー、すー、と規則正しい寝息が聞こえてきた。うたた寝ではなく本格的に寝入っている気配だ。海棠の献身など、比嘉にはどうでもいいのだろう。頼まれてもいないことを海棠が好きでやっているんだから、それも仕方ない。 海棠は車をUターンさせて、比嘉のマンションに向かった。どうせ夜中まで本を読むか、研究に熱中していて寝不足だ。食事よりまず睡眠だろう。
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