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「比嘉、着いた」
地下駐車場に車を停めて比嘉の肩を軽く揺すったが、うーん、と迷惑そうに眉をひそめるだけで起きやしない。仕方なく抱え上げて運んだ。無意識にか、落とされないように海棠の首に両腕を回して抱きついてくる。
「学生の頃は、お姫様抱っこはいやだとか初心なこと言ってたのにな」
今では当たり前のように抱えて運んでいる。あの頃の純情はどこへ行ったのか。玄関と寝室のドアを少々乱暴に蹴り開けて、眠り姫をベッドに寝かせて、一息つく。それから上着や靴下を脱がせてズボンからベルトを引き抜いても、比嘉は健やかな寝息をたてている。小憎たらしいぐらい無防備で、無邪気だ。そして、そこも可愛いと思ってしまう、とことん間抜けな自分がいる。
海棠は自分もスーツの上着を脱いでネクタイを外した。比嘉の上に馬乗りになって見下ろしても起きる気配は無い。
「比嘉、抱くぞ」
投げ出された手のひらに自分の手を重ね、指をからめる。うっすらと開いている唇を奪って、何度も口付けた。
「……ぅ、ん」
比嘉が寝返りを打とうとして身をよじる。シャツをまくりあげて腰から背中を撫で上げたら、ぴくんと肩が跳ねた。ようやく薄目を開いて、海棠を見上げる。
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