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「なに、ごはん…?」
「食事はやめた」
「…やめたって…」
何か言おうとした口をふさいで、肌をまさぐる。しっとりと滑らかな肌は海棠の興奮を誘った。比嘉はまだ寝ぼけているのか、ほとんど抵抗しなかったが、海棠が手のひらで首筋や胸元を撫でるたびに身じろいだ。
「ンッ、…くすぐったい。もう、これするのいやだっていつも言うのに」
「途中まではな」
優しく愛撫を続ければ、いつだって『いや…』と抵抗する声が甘くかぼそい喘ぎ声に変わる。
前髪をそっと払い、こめかみにキスを落として、両腕に囲った比嘉を見下ろす。まだ眠たげな表情をした比嘉が、それでもそっと海棠の頬を撫でてきた。
「自分の誕生日にまで僕の世話しに来なくていいのに」
「…ほっとけ。俺がそうしたいんだ」
海棠はそう答えながら驚いていた。比嘉が海棠の誕生日を覚えていたことが驚きだ。去年も一昨年もその前も、本やら顕微鏡やらを持って行けないところへは行きたくない、とごねる比嘉を無理やり食事に連れ出した記憶しかない。比嘉の方から誘ってくれることがないなら、誕生日を一緒に過ごしてもらうためには、毎年強引に連れ出すしかなかった。
「……抱くのも、したいの?」
小声で問われて、即座に頷く。
「当たり前だ」
それなら、と比嘉が自分から体を開いてくれることを期待したが、比嘉の反応は淡白だった。
「でも僕眠いよ。寝ちゃうかも…」
海棠はぐっと奥歯を噛みしめた。『プレゼントがわりに僕のこと海棠の好きにしていいよ』とか、『今夜は激しくされたい』なんて言ってくれるわけないと分かっているが、行為の途中で寝ちゃいそうとはあんまりじゃないか。たまに本気で泣かせたくなる。いや、会うたびに、ほとんど毎回そう思っている。自分のものなのに、まったく自分の思い通りになってくれない相手なのだ。
つ、と比嘉の細い指が海棠の首筋をなぞった。頬に触っていた手を下ろしただけなのだろうが、鼓動が跳ねる。
「……いいよ。無茶はしないから、うとうとしていろ」
「…うん」
髪を撫でつけて、あやすように指で梳いてやったら、比嘉の気配がゆるくほどけた。
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