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第二章 腐女子と初めてのデート
優介の働いている会社は、小さな出版社である。
『マリモ出版』という、弱小出版社で、ベストセラーなど一度も出したことがない。
築三十年の古ぼけたビルの三階にある。
業界でも、名前を知らない者が多いのではないか、というくらいである。
優介は、そこの編集部員だ。
昨日の、大事件のお陰で、寝不足の頭を抱えて出社した優介は、いきなり入り口のドアのところで、何かに躓いてこけた。
「うわっ!」
足元を見ると、段ボールに包まって、寝ている大柄な男がいた。
「紀里谷っ! また、終電、逃したのか?」
そう、優介が、その男に訊いた。
紀里谷 誠は、優介の同僚の編集部員である。
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