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ーマリモ出版ー
「すっごい可愛い子で、年は二十歳。大金持ちのお嬢様ですよ! それに、僕に一目惚れだそうです!」
優介は、鼻高々に告げた。
「うっそだあ~」
そう、声をあげたのは、営業部長の近藤信子だ。
営業部長と言っても、総務・経理を兼務し、雑務全般を担っている。
見たところ、ただの小柄で小太りなおばちゃんである。
「近藤部長も、そろそろお見合いでもして、旦那さんを見つけたらどうですか?」
営業部員の新庄正臣が、掛けている黒縁メガネを押さえて、神経質そうに言った。
マリモ出版の営業業務のほぼすべては、信子ではなく新庄が一人で支えていると言っても過言ではない。
「あー! 新庄君、セクハラ~!」
信子が叫んだ。
信子は、アラフィフの独身なのだ。
そこへ、トイレから、ひょろりとした副編集長の副島 賢が出て来た。
副島は、このマリモ出版を支えている優秀な副編集長だ。
編集長の永井がいい加減な分、副島がしっかりしている。
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