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大体が、このお見合いは、謎だった。
優介の父親が持って来た話だが、相手の名前さえ、一切何も事前に教えてくれなかったのだ。
ただ「会社の社長じきじきの頼みだから」としか、言われなかった。
優介の父親の会社は、小さな印刷工場だ。
父親は、そこの係長である。
そりゃあ、社長からの頼みは断れないだろう。
しかし、何故に、社長が、係長の面識のない息子の見合い話を持って来るのだ?
ああ、わからない……。
でも、そんなことは、彼女を見た途端、吹っ飛んでしまった。
そうだ!
まずは、名前だ。
名前を訊かねば。
優介は言った。
「僕は、佐倉優介と言います。突然のお見合いでびっくりしていますが、あなたのお名前は?」
そのめっちゃ可愛い彼女は、恥ずかしそうに俯いたままだ。
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